虚実の中からの真実を探求する試みを「マモノ」という表題にのせて制作したものです。 2016年から制作を開始し2017年に初めて発表したシリーズであり、「写真は何を写すのか」の私なりの回答でもあります。
ここでいうマモノとは、自分自身のことであり、同時に他者のことでもあります。人は移ろ う時間に流されながらも、様々な風景に出逢いながら生きています。皆さんご存知の通り、写 真に写るのはカメラが捉えた風景であります。カメラが捉えた風景は、我々が目で見た風景と は似ているものですが違います。ただそれは決して虚構だけで構成されているのではなく、虚と実の織りなす世界だと考えます。表層には虚構が積み上がっていてもその奥から突き破ってくるようなエネルギーが写真に宿ることがあります。そんな写真の不思議を私は探求していま す。私が探しているマモノはいつでも写真に写るわけではありません。それは、マモノが分厚 い皮膚に覆われていること、そしてまた同時に分厚い皮膚の内側に住んでいるからでしょう。いまかいまかと心待ちにしていると、マモノはたまに皮膚から外側に顔を出します。その瞬間にマモノは写真に写ります。
マモノという表題にした理由は、このような風景に出会うことの偶然性と、それを捉えよう とする能動的な必然性への感謝と出会いが賜物つまりギフトであること、そして物の怪のよ うな人間の目に見えづらいものであることを表したかったからです。ストレートに撮影された 写真だからこそ表現できる「写真が写してしまうもの、目に見えなくても写真に写ってしまうもの」があると信じています。
そしてこのマモノシリーズは、私の写真に対する考え方そのものであります。このシリーズは幸いなことに数回展覧会の形式で発表の機会を得ました。その度に写真を一部変え「マモ ノ」を提示してきました。このプロジェクトは、写真は何を写すのかという大きなテーマを 掲げており終わりなき探求であります。そこで、区切りのいい5年目に、写真を追加して写真集という形式に纏め展開しようと考えております。日常のルーチンに埋没してしまっている不思議なマモノとの出会いを掬い上げます。
作家名トミモとあきな作品名マモノ年度2020年 PITCH GRANT