沖縄に通い始めて3年になる。当初は、知らない土地の過去と現在を、写真を撮ることで理解しようとする目的があった。しかし、繰り返し沖縄を訪れていると、私が沖縄を撮 り続ける目的は、沖縄の歴史的イメージを写そうとするだけではなく他にあるのではないかと考えた。そして次第に、「私はなぜ沖縄を撮るのか」「なぜ沖縄に惹かれているの か」という疑問とぶつかるようになった。その疑問と向き合うために、沖縄各地を旅しながら撮影をし、時間をかけてセレクトをしていく。この行為の繰り返しは、沖縄という土 地を理解しようとするだけではなく、自分自身を探る行為でもある。
沖縄を訪れると、本土とは異なる独特の雰囲気を頻繁に感じる。それは、人々や光、色彩、においなど様々なものに宿り、恐らく外から来た私のような旅人ほど異質なものに感 じる。その異質さを怖いもの見たさで撮り続けることは、私にとって沖縄を撮り続ける原動力となっている。
旅をしていると、沢山の人々と出逢う。ゲストハウスで出逢った人に、「沖縄の人同士だと喧嘩になる。内地の人だし、話すのはこれっきりかもしれないから。」と言われ、また別の日には出逢って1年ほど経つ知り合いに、「旅人のあなたの方が色々話しやすい。島の人同士だと話せないこともある。」と言われたことがある。このように、出逢った人々は、旅人の私に対してだけ見せる表情が確かにあった。もしかしたら、それは私にしか写すことができない沖縄の一面なのかもしれない。
沖縄を撮ることは難しく、「私はなぜ沖縄を撮るのか」「なぜ沖縄に惹かれているの か」という疑問の答えには、未だに辿り着けていない。こうして写し出されたイメージは、旅をする中で遭遇した風景を淡々と記録しているだけに過ぎないが、私が見た偽りのない事実である。私は、この作品を通して、自身が旅をする中で感じた違和感や、あえて怖いもの見たさで撮影をしている感覚を共有できる作品にしたい。また、根気強く向き合うテーマだと考えている為、今後も繰り返し沖縄に足を運びながら、旅の中で生じた疑問の答えや旅と写真の関係性を追求していく。
作家名星子桃花作品名島を渡る年度2023年 PITCH GRANT