PITCH GRANTの最終審査が京都市の将軍塚青龍殿で行われ、第2回のグラント受賞者は、
宮田恵理子さんの「disguise」と、木村孝さんの「Amata Trilogy」に決定しました。

2021 PITCH GRANT 受賞者・ファイナリスト

1次審査審査員総評

中村史子(愛知県美術館主任学芸員)
それぞれの応募者の方の思いのこもった作品、拝見することができて非常に面白かったです。切実な理由や疑問、熱意があり、写真に向かっていることが伝わる作品が多数ありました。ただ一方で、「もう一歩、ここをこうすればもっとよくなるのに!」という作品が沢山あり、悩ましかったです。せっかく面白いテーマなのに、掘り下げ方が浅かったり、テーマ設定自体が難解でなかなかイメージからはコンセプトが読み取りづらいと感じるものもありました。

作り手である自分自身の頭の中では十分にわかっていても、第三者には伝わらないことも多いものです。第三者に作品を見てもらってコメントをもらう経験、反対に、第三者の作品をみてコメントする経験がたくさんあれば、こういった部分は解決されるかもしれません。まだまだ良くなる可能性を秘めた作品が多数あります。これからの展開も期待しています。

深田志穂(ビジュアルジャーナリスト)
クオリティーが高く、熱意が感じられる応募作品ばかりで、審査させて頂いて大変光栄に思います。アイディアが素晴らしくても、技術的な面があと一歩だったり、オリジナリティーに溢れていても表現方法に工夫が必要など、今回審査に漏れた方も、自分の作品の強みと弱みを認識して、今後とも是非試行錯誤しながらプロジェクトを育てていって頂きたいです。

小林孝行(flotsam books 代表)
写真はとても上手でも伝える文章がまずいとむしろ写真の魅力を損なってしまいます。また逆に構想が壮大であれば写真が弱い場合もガッカリとしてしまいます。続きが見たい!完成したものが見たい!展示で見てみたい!みたいなのが少なかったように思います。

岩根愛(写真家)
今この時を、みなさんがどのように生きているのか、想像しながら拝見しました。外出が難しい今、時間をかけられる、身近な対象をテーマにした作品に対照的に熱量を感じました。読み解くことを強いるには、伝える努力をするべきです。40点まで、と、比較的多くの写真点数で応募できるのに、点数が少なく、言葉だけが壮大すぎるもの、その手法の先人たちの仕事は見たのか、疑問に思うものが多くありました。

豊田有希(写真家・2020年度PITCH GRANT受賞者)
今回審査をさせていただく機会をいただきありがとうございました。昨年は、自身のプロジェクトを客観的に見直し考える機会に繋がりました。さらに今年、僭越ながら審査として他者の写真を見る側として関わらせていただき、そこまでの過程を含めて写真そのものと向き合える環境にも繋がっているPITCH GRANTに重ねて感謝申し上げます。

プロポーザルを書くのも、プレゼンをするのも大変でしたが、写真を審査する。ということ、さらに自身とは全く違う分野の写真を見るということも難しく感じました。まずは写真の印象から、次にプロポーザルを読んで再度写真を見るということを、全てのプロジェクトで何度も繰り返し見直して審査に当たらせていただきました。

写真・タイトル・プロポーザルの全てに置いて調和し、完成度の面でも惹かれるプロジェクトがいくつかありました。そして昨年の総評にもあるように、プロポーザルに大して写真が追いついていないと感じるものもありました。作品を制作する時、自分がそこに何を思ったか?どうしたら表現できるか?どうしたら…どうしたら…と沢山の問いを自身に向け、公ー自己の間をいったりきたり試し失敗しながら繰り返すことで作品を研いでいくことが重要だと考えています。ただ、逆に写真を見て?の浮かんだものでもプロポーザルを読むことで理解が一気に広がり、見え方が変わる作品もあり今後の展開が気になる作品もありました。

昨年の自身の反省点も含めフィードバックするという学ばせていただく意味でも、最終審査のプレゼンを楽しみにしています。ありがとうございました。